お知らせ

飼育野生動物栄養研究会からのお知らせです。

 飼育野生動物栄養研究会2023年度大会は、11月11日、12日に大学教員および研究者、動物園水族館の職員、学生など約70名が参加し、富山大学において開催することができました。ご参加いただいた皆様ならびに会場の準備を提供しご協力いただいた富山大学理学部生物学科・山崎裕治様にこころから感謝申し上げます。また、本大会では、野生復帰を見据えたヨウムの飼育繁殖技術の確立を目指した取り組みで富山市ファミリーパークと連携しているウガンダ野生生物保全教育センターの職員3名に参加していただく機会ともなり、少なからず国際的な交流をもてたのではないかと思います。
 今回の教育講演では、国内希少種の「保全」として「野生復帰」をキーワードとしてご講演いただきました。希少種の「保全」の基本的な考え方は、生息環境の維持を中心とした生息域内保全と動物園や水族館で飼育繁殖させることで種を維持する生息域外保全を両輪で進めるものです。生息域内で個体数が激減した場合などには生息域外の個体を「野生復帰」させることを検討します。「野生復帰」では野生に戻した生息域外保全で飼育している個体が自然環境で世代を繋ぎながら種を維持していくことが目標となります。そのためには、復帰させる個体が自然界で自ら必要な餌を採食する能力を身に着けておくとともに、生息域内で野生復帰個体が生きていけるだけの餌資源が確保されていることが必須となります。野生復帰を想定した生息域外保全では野生復帰後の餌について野外調査の結果を踏まえて確認し、飼育個体について生理学的および行動学的な検証を行いながら野生復帰個体を創出していくことが重要であることを再認識しました。
 一方、動物園水族館の社会的役割にひとつとして、「種の保存」があります。「保存」と「保全」では若干意味合いが異なります。動物園水族館における「種の保存」は生息域外保全により種を維持していく取り組みになります。現在、日本の動物園水族館では、その多くが絶滅の危機に瀕している数多くのネコ科の動物を飼育展示し、その種の生態や現状、保全の取り組みを伝える取り組みを行っています。しかし、動物園や水族館で野生動物を飼育するスペースには限りがあり、動物園や水族館の連携の下、種の生理的寿命を延ばすための飼育技術を検討しながら計画的な繁殖に取り組むことが要求されます。ネコ科動物では腎機能疾患になる個体が多く、腎機能に餌が関与していることが言われてきましたが、実際にどのような餌で予防が可能になるのかははっきりしていません。そこで、今大会の特別講演では、ネコの餌におけるリン酸・リン酸塩と腎臓機能の維持のかかわりについてご講演いただきました。日本の社会も時代とともに変化し、愛玩動物についてもその種類や家庭内における位置づけが多様になっており、愛玩動物の獣医学および飼料学の研究も加速的に進んでいます。今後はこれらの研究結果を野生動物種に当てはめて検証することも増えてくるものと考えられます。
 地球規模の環境問題は今後加速的に深刻になることが推測され、それに伴って種の保存や希少種の保全の取り組みは増加するものと考えられます。本研究会でも種の保存や希少種の保全について、さまざまな分野の大学教員および研究者、動物園水族館職員などによる広い視野での議論を進め、それぞれの専門分野の研究を推進していく必要を実感しました。


村井 仁志(富山市ファミリーパーク 園長)